前編からの続きです。
「実は今、1年ぐらい同棲してるの。」
この言葉の破壊力たるや凄まじいものがあったが、更なる会話から引き出した事実は衝撃的なものだった。
彼女の同棲相手は小学校の同級生で、途中で他校に転校して行った男だと言う。ちょうど僕が振られた直後、彼からの強引な誘いを断りきれず、遊んだ時に気が合ったのが付き合うきっかけだったとか。
その後の彼女の生活はバラ色だった。
彼氏の赴任先である北関東の至る所をデートで訪れ、彼氏の転職・上京を機に同棲をスタート。彼女がプロダンサーの夢を諦め、家庭に入ろうと考えた時期と重なり、幸せの絶頂だったという。
しかし、幸せな時間が長く続かないのは世の常である…。
同棲前から別の女性の影がチラつく部分のみが、彼女にとっての彼氏に対する不満・不安の材料だったと言う。
周囲の友人も口を揃えて「アイツはかなりの遊び人だった。今は三十路だから落ち着いたと思うけど。」なんて言っていたらしい。
決定的な瞬間は昨年末にやってきた。
忘年会で泥酔した彼氏が携帯を放り出して眠り出したその時、見覚えのない女性からラインのメッセージが彼氏の元へ届いた。
「昨日はありがとう️♡ 次はいつ神戸出張なの?」
恐る恐る彼の携帯を開いた彼女の目に次々と衝撃的なメッセージが飛び込んで来た。
「部屋番号教えて️ ♡」
「只今、出張恒例のナンパ中!」
「また地方出張の時に会おうな ♡」
「今晩、一緒にいない?」
などなど…
彼氏は「俺はチャラいキャラで認識されてるから、チャラい振りしたメッセージを送ってただけだよ!別れるなんて認めない!」と否定し続けているらしいが、彼女にとっては彼氏の浮気を疑うには充分過ぎるものだった。
その一件の直後、彼女が年末の帰省をして悶々としているときに僕からあけおめザオラルが届いたのだとか。
正直なところ、僕にはわかる。彼女の同棲相手はナンパ師だ。
唐突に幼馴染に連絡を取る手法、強引な誘い、他の女の影が見え隠れする雰囲気はナンパ師のそれそのものだ。恐らく、彼女が今の生活を続けていても100%の愛情を受けることは一生ないだろう。
「これまで彼氏以外の男からの誘いは全部断ってたの。でも、周りの友達にも彼氏の浮気のこと相談できなくて…年内に結婚も考えてるし。どうしたらいいかわからなくて。僕君なら気軽に相談できるかなって思ったの。」
そう言って貰えるのは素直に嬉しい。しかし、残念ながら彼女は重大な勘違いをしている。それは、僕がもはや2年前のイイ人 & ショボ腕ではないと言うことだ。「経験人数=付き合った人数=3人」の彼女とは比べものにならない程の修羅場・拒絶・成功体験を積み重ねて来た。
こちらも無料相談してあげるほどお人好しではない。それなりの対価は頂く。なぜなら、僕も彼女に魅了されている一人だから。
僕「なんかしんみりしちゃったし、パァッと歌おうか!レッスン仕込みの歌聴かせてよ!」 こうして勝負の舞台はカラオケへと移行することになった。
~後編に続く~
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